漆喰コラム
日本の漆喰と世界の漆喰、そして珪藻土との違いとは?
もくじ
日本の漆喰と世界の漆喰
日本で漆喰といえば、城・土蔵・神社仏閣、その多くは、外壁の平滑な壁そして屋根瓦でした。洗練された職人技とそれに裏打ちされた経験を元に、鏝の跡も残さず平滑にムラなく仕上げた漆喰には、凛とした日本の美が宿ります。日本で漆喰といえば、平滑に押さえる白壁が、ほとんどでした。
日本の漆喰の種類
1. 本漆喰
昔からお城や蔵の壁に使われてきた漆喰です。材料としては、塩焼きの消石灰・麻すさ・海藻のりと水を混ぜて作られます。ひび割れや塗りにくさという欠点もありますが、耐火性、耐水性に優れており、耐久性の高い塗り壁材と言えるでしょう。
2. 土佐漆喰
高知県で昔から作られている漆喰。雨の多い高知県の気候に対応した堅牢性を持つ。塩焼きした消石灰に、3ヶ月以上発酵させた藁(わら)と水で練り、1ヶ月以上熟成させます。黄白色の土佐漆喰ですが、塗り施工後に時間が経つにつれて、少しづつ白に近づいていきます。
3. ムチ漆喰(琉球漆喰、屋根漆喰)
沖縄県の伝統的な漆喰。沖縄ではお祝い事があると「ムーチー」というお餅を食べる習慣があり、ムチ漆喰は色・手触り感が「ムーチー」に似ていることが由来だそうです。
主に沖縄では、赤瓦屋根の瓦止めとして使用されております。ムチ漆喰の作り方としては、生石灰と藁と水を練り合わせます。
※ムチ漆喰=生石灰、土佐漆喰=消石灰の違いがあります。
4. 既調合漆喰
漆喰メーカーが製造している漆喰製品のことを総じて「既調合漆喰」と言います。塩焼きした消石灰に麻すさ、骨材として炭酸カルシウムを添加した物が一般的です。
のり(ツナギ)に合成樹脂、化学繊維を使用した製品。顔料を調合し、色の付いた漆喰。自分で練る必要がなく、そのまま塗れるペーストタイプの製品もあります。
5. 漆喰関連製品
海外製の消石灰を使用した塗り壁材、漆喰と同じ機能を有するとされる塗料やほとんどモルタルに近い製品のこと。漆喰と言えるものか悩み所でもあると言えるでしょう。
ヨーロッパの漆喰
世界的に見れば、漆喰は日本以上に内外装として使用されています。特にヨーロッパでは昔も今も漆喰が多く使用され、イタリアやフランス・プロバンス、エーゲ海周辺などは、漆喰建築が多く、私たちが魅せられている風景は、漆喰の風景といってもいいほどです。
ヨーロッパの漆喰仕上げは、単一な日本の漆喰仕上げと異なり、様々な漆喰仕上げがあります。イタリアの建築家カルロ・スカルパが設計したポポラーレ銀行のような、繊細で美しい漆喰磨きもあれば、住人がハンドメイドで塗る、粗く手触り感のある漆喰もあり、まさに色々で、多種多様です。
現在、国内においても伝統的な漆喰だけでなく、海外の漆喰仕上げのような多様性、新しい発想の漆喰が消費者の選択肢を増やしています。「伝統」や「格式」、あるいは「白壁」や「職人技」という従来の漆喰に対する印象は、「自由」や「手軽さ」「多彩」など、より柔軟で現代的になってきています。
西洋漆喰と和漆喰の違い
西洋建築の壁は石灰岩の石やレンガで作られており、壁全体が建築構造となっており、壁が崩れては困るので、分厚く塗り強度を出す必要があります。その為、消石灰に砂、凝集剤、保湿剤、防水材、セルロースファイバーなどを混ぜて壁に厚みを出しやすくしています。砂が混ざっている分、服が汚れやすい、砂がポロポロと剥がれ落ちやすいという一面もあると言えるでしょう。
それに対し、日本建築では木造構造で柱、梁が骨組みとなる建築構造です。
柱と梁が壁の強度を出してくれますので、大量の砂を混ぜずることなく薄く塗ることができて美しく仕上げることができると言えます。
漆喰と珪藻土の違い
漆喰と珪藻土は、天然素材を主原料とした塗り壁材であり用途は比較的似ていますが、性質はまったく異なります。漆喰は主原料が消石灰であり、壁として最も重要な「自ら固まる力」を持っています。珪藻土は、「自ら固まる力」を持っていないので珪藻土以外の原材料で壁として固めたり、接着させないといけません。
使用できる場所にも違いがあります。漆喰は、内・外壁、水廻りにも使用できますが、珪藻土は、基本的に内壁のみになります。
珪藻土の機能性
機能性に関しての違いは、珪藻土単体で考えた場合、調湿性は珪藻土の方が優れています。珪藻土が自ら固まる力をもっていませんので、配合されている材料に左右されるでしょう。漆喰が珪藻土よりも優れている点は、防カビ性、抗菌性、二酸化炭素吸収といった、漆喰のアルカリ性、自ら固まる力による機能性です。また、漆喰は、国内でおよそ1,300年前から使用されている壁材ですが、珪藻土は、およそ20年程前に生まれた壁材です。その歴史には大きな違いがあります。